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又吉 京都ギャラリー&カフェ,アートショップ・Black bird White bird ブログ [ブログ]

☆待ち人、きたる。


彼と初めてあったのはもうずいぶん昔のことだ。7~8年前くらいだろうか。

私は雑誌や本の編集をする会社に勤めていて、
そのとき自分で企画をした本に短い物語を書いてもらったのだ。

その頃彼は、まだあまり有名ではなく、打ち合わせにも一人で来た。

私が作っている本やその主旨、
撮っていた写真を1枚ずつ丁寧に見てくれて、とても感心してくれた。

‘ちょっとシャイで、決してクラスで一番の人気者とか、
目立ちたがり屋ってってタイプではないけれどかといって暗いヤツでもなくて。
でも人知れず延々と練習できる、そんなストイックさも持ち合わせた少し風変わりな子’

それは、まるで自分のようだと、言った。

確かに、一見、大勢の人の前に立つとは思えない、大人しそうな印象だったけれど、
物静かな話し振りの中には、きちんと自分の意見を言える、しっかりとした芯を感じた。

履いていたスニーカーを見て、おしゃれな人だなと思ったことを覚えている。

私の本の話を、丁寧に、そして感心して聞いてくれる彼の礼儀正しさや、
少しの間だけ、同じ気持ちで語り合えたことが嬉しかった。

あれから、彼はもう雲の上の人のようになってしまったけれど、
時折、私の出すメールにも、きちんと返信してくれる。

きっと彼の周りにはたくさんの人たちがいて、見える景色も変わってしまっただろうに。

でもきちんと返事をしてくれる。

その度に、小躍りする勢いで「返事が来た」「返事が来た」と言って喜ぶ姿を
ダンナさんは半ば一緒に喜び、半ばあきれて見ている。

「私がもう十ほど若ければ、一緒にお酒を飲んだり遊んだりしてるのになあ」
なんて浮かれて言ってみる。


おせじにも忙しいと言えなくて、
冗談まじりに「今日はもう閉めようか」と言っていた夕方、彼が突然現れたのだ。

30分ほど、その本ことや今の彼の近況なんかを話したりして、彼は帰った。

家に帰って寝る前、思いついて、ツイッターを検索してみたら、
彼がその本に自分が書くことになった顛末を人前でしていたらしい書き込みがあった。
少し面白おかしく脚色されているようだった。

特別、そんなこともなかったと思うが、まあいいやと思った。

思い出したからうちに来てくれたのか、
うちに来たから思い出したのか。

でもきちんと顔を出してくれるのが彼らしい。

そしてやっぱり、髪を切りにいこうと思った。



( http://blog.blackbird-whitebird.com/?eid=30 )


[犬]又吉さんとのエピソードです。




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